カウンセリング広報だより
第28回 幸せな結婚と夫婦の友情(2010・8・1)
心理カウンセラー 中島美佐子
アメリカに、結婚と家族に関する幅広い研究を続けるゴットマンという心理学教授がいます。彼は、関係の危機にある夫婦に独自の治療プログラムを行っています。それは、「幸福な結婚は、夫婦の深い友情から成り立つ」という信念のもとに作られているといいます。
ここでゴットマンが言う友情とは、「夫婦が共同生活者として、互いに尊敬と喜びを分かち合うこと」を意味するそうです。また、友情は恋愛感情をも持続させ、夫婦間に溝を作らない最良のものだとも言っています。
「夫は、友達の話を聞くようには、わたしの話を聞いてくれない」と訴えた女性がいました。彼女の夫は、人柄がとてもよく、周りから好かれ、友達や同僚の相談を受けることも多かったようです。けれども、その友達に対するようには、奥さんに接することができませんでした。
「会社に遅刻したら、上司にいやみを言われちゃった」と奥さんが言うと、夫は「遅刻したんだから、仕方ない。それに、上司も機嫌が悪かったんだろう」と言います。「疲れた」と言えば、「男の仕事はそんなもんじゃないぞ」と言います。
上司にいやみを言われた友達には、「それはむかつくね」とか「いやな思いしたな」などと言えたかもしれません。友達が「疲れた」と漏らせば、「お疲れさま」と声をかけることができたでしょう。
なぜ、夫には、妻には、大切な友人に接するようにはできないのでしょう。ひとつには、相手の存在が近すぎるということがあるかもしれません。家族というものは大切な人だけに、一心同体であるかのように錯覚しがちです。そのため、行動や発言に、つい厳しくなり「こうであってほしい」という要求も大きくなります。あるいは、結婚によって信頼関係が確認された後には、さらに絆を強めたり、相手を思いやる努力を怠ってしまうものなのかもしれません。
配偶者は、夫であり、妻であり、恋人であり、家族です。でもその前に、「とても大切な親友のひとり」だということを忘れないでください。
友達への態度と、夫へ、妻への態度があまりにも違っているようだったら、要注意です。もう一度、友達としての思いやりを思い出してみましょう。
参考文献 ジョン・M・ゴットマン(2007) 「結婚生活を成功させる七つの原則」 第三文明社