カウンセリング広報だより
第12回 迷う気持ち -ステップアップのとき- (2007・8・1)
心理カウンセラー 中島美佐子
タイミングから人工授精へ。人工授精から体外受精・顕微授精へ。治療の次の段階へ進むことを、ステップアップと呼びます。その決断をしなければならないとき、迷いませんか。「ここまで妊娠しないなんて思わなかった」「高度な治療に移ってもいいのか」「そこまでして子どもが欲しいのだろうか」など、足踏みすることはありませんでしたか?
100%の希望をもって迷いなく不妊治療を受けなければならない。そんなふうに思い込んでいないでしょうか。不妊治療をしている人はみんなすごく子どもを欲しがっているのだろう、と考えるものですが実際はそうでもありません。カウンセリングで「治療への迷い」や「子を持つことへの不安」が語られることは、案外多いのです。
「迷ってはいけない」のではありません。「迷いを無視してはいけない」のです。違和感、迷い、不安、心配、怒り、悲しみなどのネガティブな感情は、「持ってはいけない」という思い込みからその存在を無視されがちです。でも、ネガティブな感情は表現されないと、心の中にどんどんたまって行っていつか爆発します。無視されてしまった小さな迷いたちが、のちに大きな不安や怒りを生み出すことがあるのです。
「自分はどんなことに違和感を覚え、迷っているのだろう」。「不安な気持ちはどこから来るのだろう」。そんなことを立ち止まって考え声に出してみることは、心にとって必要なことなのです。それが、心のガス抜きの役割を果たします。毒を小出しにすることで、心が健康なままでいられるのです。
迷うようでは治療をしてはいけない。「いやだ」と言ったら治療をやめなければならない。そんなことは、全然ありません。「迷う気持ち」は、実はすごく大切なものです。心のガス抜きをしながら、いろいろなことを自分なりのやりかたで選択していってほしいと思います。
そのためには、治療のサイクルから少しだけはずれて自分の気持ちを振り返ってみることも、時には必要です。そうすることが、新たな決定へと進むきっかけになるかもしれません。