カウンセリング広報だより
第24回 脱「ストレス解消」!(2009.9.1)
心理カウンセラー 中島美佐子
「ストレスは少なければ少ないほど良い」「ストレスがあるのは間違っているから、なくさなければならない」。こんなふうに思っていませんか?
「ストレス解消」「癒し」などという言葉には、つい惹かれてしまいます。わたしたちはそれほど日々ストレスを感じているわけですが、裏を返せば、ストレスをなんとかしなければならないという思いにとらわれている、ということでもあります。ストレスが少しでもあると気になってしまい、その結果、ストレスをなくさなければというプレッシャーが生まれさらにストレスを感じてしまう、という悪循環におちいっています。
最もストレスを引き起こすものは、人間関係だといわれています。言いたいことが伝わらない、相手の行動に腹が立つ、傷つけられた、嫌われた、ケンカした、いろいろです。人間関係のストレスや葛藤から逃げたければ、ひとり無人島で暮らすしかありません。でも、そんな人生はストレスがないだけでなく、楽しみもありません。
現代は「人生は楽しむのも」という時代なのかもしれません。つらい思いをするなんてまっぴら、と。でも、思い出してみてください。楽しさや幸せはつらさや大変さを経験したあとほど実感できるものです。楽しいだけの人生はありえない、むしろむなしいという逆説です。「幸福なだけの完全な幸福」など、どこにもないのです。
では、ストレスを感じたときはどうすればいいのでしょう。ストレスをひとつ残らず取り除こうとするから、そのことが気になってしまうわけです。だから、「ストレスはあって当たり前、なくそうと思わなくていいのだ」と考えることこそが、ストレスを少なくする秘訣ではないでしょうか。
ストレスは必ずしも「排除すべき悪者」ではなさそうです。空腹感が食べ物においしさをプラスしてくれるように、悪役がいないと映画が面白くないように、ストレスも人生に味わいや刺激を与えてくれるスパイスのひとつです。そう考えてみると、ストレスがあってもいい、なくそうと必死にならなくてもいいのだ、と思えてきませんか。
参考文献 岸田秀 (2008) 'ストレスは人生の必需品' p198 「哀しみ」という感情 より 新書館