カウンセリング広報だより
第14回 精子は男らしさの象徴?(2007・12・1)
心理カウンセラー 中島美佐子
最近では、男性側に原因のある不妊も多いことが分かってきました。その多くが精子の問題なのですが、このことはどんなことを意味するのでしょう。
精子が少ない、運動率が悪い、精子が見当たらないということは、男性にとっては「男らしさ」の否定を意味します。加えて、わたしたちの中には「生殖(不妊)は女性の問題」という暗黙の了解があります。不妊は実際には女性だけの問題ではないのですが、この間違った考え方も女性だけでなく男性を苦しめる要因となっています。男性は「本来女性の問題であるはずの不妊を抱えている」として、女性よりも偏見をもたれて見られてしまうからです。
もちろん、精子によって男性の人としての価値が変わるわけではありませんし、人格と関係しているわけでもありません。それでも精子のあるなしが男性の存在そのものを大きく揺さぶり、「おまえは男として不完全だ」と言われているように感じる人もいるのではないでしょうか。
男性は「感情を抑える」ことが男らしいとされて育ってきていて、感情表現が苦手な人が多いと考えられています。自分の気持ちを振り返るということにも慣れていません。だから、精液検査の結果を見て、本当は傷ついたり落ち込んだりしていても、表現できなかったり自分の傷つきに気づいていなかったりもします。
精子の所見を突きつけられることで、いままで築いてきた男性である自分の一部を失ってしまうこともあるほど、精子には意味があるようです。その喪失感は、振り返られて扱われないと傷となって残ってしまうことがあります。傷つきをきちんと扱うことは、新しい自分を作り上げていくきっかけにもなるのです。
「精子がどうであれ、夫としてのあなたに変わりはない」。そんなメッセージを、ご主人に送り続けてほしいと思います。そして男性も、傷ついているかもしれない自分の気持ちを一度は振り返ってみてください。自分の中の「弱さ」に気づけることこそが、本当の意味での強さなのだと思うからです。
参考文献 村岡潔 岩崎晧 西村理恵 白井千晶 田中俊之(2004) 「不妊と男性」 青弓社