カウンセリング広報だより
第8回 心のフタを開けたら・・・(2006.12.1)
心理カウンセラー 中島美佐子
不妊治療は、何かと大変なものです。「子どもが欲しいのになかなかできない」というだけで、大きな傷つきとなり、フラストレーションにもなります。注射は痛いし、通院も一苦労です。心身ともに疲れます。何より、一生懸命治療をしても結果が出なかったときが一番つらいかもしれません。悲しみや怒り、落胆や自信喪失など、さまざまな気持ちに押しつぶされそうになります。
落ち込んだとき、どうしますか。ひとりで泣きますか。ご主人に愚痴を聞いてもらうでしょうか。誰かと話をし、たくさん泣くことは心の回復には必要なことです。
でも、何週間も泣き言を言っていられない、ふさぎ込んでいられない、と考えませんか。友人、親、そしてご主人、みんなが自分を心配してくれている。早く元気にならなければ、早く大丈夫な自分にならなければと、知らないうちに頑張っていませんか。
まじめで、人の気持ちがよく分かる人ほど、人に迷惑をかけられないと努力をするものです。支えてくれる人を気づかう気持ちは大切です。でも、傷ついたり、悲しい出来事に出会ったときには、早く元気になろうと焦らなくて良いのです。
立ち直れたように思えても、まだまだあなたの心は回復していません。「早く元気になろう」という思いが心にフタをしている状態です。悲しみにフタをすることは、生活していくうえで必要なことでしょう。毎日忙しくて、泣いているヒマもありません。
けれど、そのフタを開けて、底のほうに沈んでいる悲しみを少しずつ洗い流す作業も必要なのです。閉じ込められたつらさはそのまま底に残り、あなたに気づいてもらおうと必死になります。たとえば、体の不調などは心からのサインかもしれません。
「自分はまだ大丈夫ではないのかも」、「本当は、心がまだつらいと言っているのかも」。そんなふうに気づいてあげられたら、心は悲しみに気づいてもらおうとする努力をやめます。
日常に追われ、底にある悲しみに触れる機会がなかったら、カウンセリングという日常から離れた場所も、たまには利用してみてください。少しは、お役に立てるのではないかと思います。