カウンセリング広報だより
第16回 不妊は不幸?!(2008・4・1)
心理カウンセラー 中島美佐子
不妊治療は、先の見えない治療です。そしてその治療は、確実に妊娠を保証してくれる治療ではありません。
「やれるだけのことをやったら、後悔しない」と、多くの人が考えます。もちろん治療をするのならば、納得し精一杯できる限りのことをしてほしいと思います。ただ、やれるだけのことをすべてやったら、本当に子どもを完全にあきらめられるでしょうか。子どもが欲しくて今まで一生懸命がんばってきたのです。「きっぱりあきらめる」なんて、ことばで言えるほど簡単なことではありません。
「子を持つ」ということは、多くの人にとって大きな意味を持ちます。自分を支える大切な存在です。簡単に割り切って「子はいらない」とは思えないかもしれません。ただ、年齢、治療回数、経済的・身体的・精神的負担、そして可能性。いろいろなことを考えた上で、妊娠することなく治療をしない選択をするときが来るかもしれません。迷いや悩みは、やめると決めたときから新たに始まります。「きっぱりとあきらめて」治療をやめるということはなく、「やめてから」少しずつ気持ちを整理したり、迷ったりしていくものではないでしょうか。また、一度やめたからといって、二度と治療を再開してはならないということにはなりません。
子どもをもたないかもしれない人生を歩き始めることは、勇気がいることでしょう。治療をやめるときには、今まで大切にしてきた「子どもを産んで家族を作る」という人生の物語を少しずつひも解いて、新しい物語に編みなおす作業が必要になるのかもしれません。それは子どものいない新しい自分の始まりでもあります。そのようなつらいかもしれない作業を経て長い年月をかけて、「不妊治療をしたこと」や「子どもがいない」ことなどを含んだ、あなただけの人生の物語ができていくのではないでしょうか。
妊娠してもしなくても、人は自分の人生を豊かに生きることができる。不妊を抱えた人生は、不運かもしれないけれど不幸ではない。今はそう思えないとしても、いつの日かそんなふうに思えることができたらいいと思います。