体外受精や顕微授精を成功させるキーポイント!
ARTを実施する前に卵巣の予備能力を評価することで、ARTによってどれくらい成績を上げられるか(妊娠率など)をより具体的にお伝えすることができます。 また、それぞれの患者様にあった卵巣刺激を選択するための重要な指標になります。 卵巣の予備能力を予測できるものには、年齢、FSH、エストラジオール、卵巣容積、前胞状卵胞数、喫煙の有無などがあります。 この中で、前胞状卵胞数(月経1〜3日目に経膣超音波で見える、左右の卵巣内にある小さな卵胞の数の合計)を最も重要と考えています。
ovarian reserve(卵巣予備能力)を評価した適切な卵巣刺激
卵巣刺激法
卵巣刺激とは、hMG(排卵誘発剤、おもに注射)を使い、よりよい卵を多く育てるための一連の流れのことです。
通常、毎月何個かの卵のうち1個が選ばれ、大きくなり排卵が起こるのですが、成熟する卵の数を増やして採卵(=卵を体の外に取り出す)するために排卵誘発剤を使います。
「薬を使わなくても排卵しているのに、どうして排卵誘発剤を使うの?卵は1個ではダメなの?」
と思うかたもいると思います。
採卵は、麻酔をかけて針を刺して行なう、手術の一種です。取り出した1個の卵が必ず受精するとは限りませんし、受精しても胚移植できる状態まで分割していくかも分かりません。胚移植できなければ再び採卵からということになります。
「この方の胚のなかで一番良いもの」を選ぶためにもいくつかの卵があればベストです。胚の凍結保存技術も発達していますので、良好な余剰胚があれば凍結保存しておき必要時に融解して胚移植することもできます(いい胚がない時は凍結できない場合もあります)ので、再び採卵からという体の負担が少なくなることを考えても、一度の採卵でいくつかの卵を取り出せるほうが良いと考えています。
また、排卵誘発剤だけを使用していると、LHサージ(排卵していいですよのサイン)を引き起こして、採卵しようと思ったら排卵してしまっていた・・・なんてことになりかねませんので、採卵目的で排卵誘発剤を使う時は、卵胞発育・排卵に関わるホルモン(FSH・LH)をコントロールする必要があります。
そのために通常使うのが、スプレキュア(GnRH agonist)という点鼻薬です(子宮内膜症がある場合にはスプレキュアではなく、他のGnRH
agonist製剤であるリュープリンを使用することもあります)。
スプレキュアの開始時期によって卵巣刺激法の名前が違います。
スプレキュア(GnRH agonist)を使った卵巣刺激法には、
- ロング法
- スプレキュアを前周期の黄体期中期から使いながらhMGを使用する方法。
- ウルトラロング法
- ロング法よりも注射の開始時期を非常に遅らせてhMGを使用する方法。
- ショート法
- スプレキュアを月経の1日目または3日目から使いながらhMGを使用する方法。
- 低容量(20%希釈) ショート法
- 20%にうすめたスプレキュアを使用してショート法を行なう方法。
スプレキュア(GnRH agonist)を使用しない卵巣刺激法には、
- アンタゴニスト法
- シクロフェニル - hMG併用法
- クロミフェン‐hMG併用法
などがあります。
以上の多くのなかから、個々に適していると思われる卵巣刺激法を選ばなければいけません。
木場公園クリニックでは卵巣の予備能力の評価をもとに、
- 卵巣手術の既往
- 過去の卵巣刺激に対する反応
- PCOS(多嚢胞性卵巣)かどうか
- 視床下部性または下垂体性の排卵障害かどうか
- ARTの経験がある場合には、卵のクオリティ、M(成熟卵)率、受精率、分割率、胚のグレード、胚盤胞到達率
なども加味して、卵巣刺激法を選択します。
木場公園クリニックでは卵巣年齢が若く、卵巣刺激に対する反応が良いかたにはロング法を第一選択と考えています。
では、卵巣年齢が高く、卵巣刺激に対する反応が悪いかたや、以前にロング法で良質の卵が得られなかったかたにはどの方法が良いのでしょうか。
木場公園クリニックで2001年8月から2002年10月までに体外受精または顕微授精を行なった738例のうち、40歳未満の637周期の各種卵巣刺激法別に、採卵数・妊娠率・FHB(児心音の確認)率・着床率を比較しました。
その結果、ショート法や低容量ショート法に比べて、アンタゴニスト法の着床率がとても高いことが分かりました。
これらのデータをもとに、卵巣の反応性が悪いかたで、インフォームドコンセントが得られた場合(個人輸入という形で患者様がご希望になった場合)にはアンタゴニスト法を第一選択と考えています。
つまり、現在木場公園クリニックで行なっている卵巣刺激法は、主にロング法もしくはアンタゴニスト法になります。では、卵巣刺激法のポイントを具体的に説明していきます。