最先端不妊治療ー男性不妊の特殊検査
男性不妊について、一般検査、精液検査等を行った後、必要に応じてその他の男性不妊特殊検査を行っていきます。
『木場公園クリニックでは、精子濃度・運動率・正常形態精子率などの一般精 液検査以外に、クルーガーテスト、イムノビーズテスト、精子生存性検査、 SCSA、高倍率精子形態検査などを取り入れ、様々な角度から精子の診断を行なっ ています。』
男性不妊の特殊検査
| ハムスターテスト | 透明体を除いたハムスターの卵に*先体反応を起こしたヒト精子が侵入できるかを調べ、精子に受精の能力があるかを調べる検査です。 *先体反応とは、精子が、頭部にある先体から酵素を放出することです。この酵素により、精子は卵丘細胞や卵の透明体を通過し卵と受精することができます。 |
| アクロビーズテスト | 精子の先体機能と運動性を評価する検査です。 ハムスターテストや体外受精の成績とよく相関します。 |
| 精子生存性検査 | 精液中に動いていない精子が多数認められるときに、その精子が生きているのか死んでいるのかを判別する検査です。 |
| HOS(ホス)テスト | ヒトの精子を浸透圧の低い液の中に入れると、尾部の構造が変化することを利用し、精子の受精能力を調べる検査です。 顕微授精を行う時に、動いている精子が見つからないときは、精子が生きているかどうかを判定するために行います。生きている精子を選び、再び浸透圧の正常な液の中にすぐ戻して精子を元の形に戻し、顕微授精に用います。 |
| 電子顕微鏡による 精子尾部検査 |
生きているが動いていない精子が多数精液中に存在する時に行います。 精子の運動をつかさどる精子の尾部を電子顕微鏡で観察し、尾部の構造に異常がないか調べます。 |
| *抗精子抗体検査 (精液、血液) |
*抗精子抗体とは、精子に対する抗体のことで男女それぞれにあります。その抗体が精子尾部に結合すると、精子の運動性がなくなったり、精子頭部に結合すると精子の受精能力が失われたりします。 女性の場合:不妊症の基本検査で、性交後検査(フーナーテスト)を行います。 男性の場合:精子に結合している抗精子抗体を直接調べるイムノビーズテストと、抗精子抗体の生物活性を調べる精子不動化試験があります。パイプカット後や精巣の外傷の後では、高頻度で陽性になります。 |
| 精液培養 | 精液中に白血球が多く認められる時に行います。 大腸菌などの細菌が検出されたときは、抗菌剤を投与します。 |
| SCSA (精子クロマチン構造検査) |
SCSAは、見た目ではわからない精子核内の異常(精子クロマチンの欠陥やDNAの損傷など)を検出する方法です。 |
| 精巣組織検査 (精巣生検) |
精液検査で無精子症と診断後に行う検査です。 |
| 精管精嚢造影 | 無精子症で、逆行性射精ではなく、精巣生検で精子がたくさん作られている方の場合には、精子の通り道の検査する目的で行います。 陰嚢の皮膚の一部を切開する必要があります。 |
| 遺伝子検査 | 非閉塞性の無精子症や高度の乏精子症の方のY染色体の微小な欠失、先天性の精管欠損症で嚢胞性繊維症の責任遺伝子との関係を調べる為に行います。 |
| 尿中精子検査 | 無精液症または精液減少症の方に、膀胱に精子が逆流していないかどうかを調べる検査です。 射精後、または射精感のあったあとに、中間尿(最初と最後の尿を除いた真ん中の尿)を採って、尿中の精子を調べます。精子数が多い時は、逆行性射精と診断します。 |
SCSA(精子クロマチン構造検査)
どんなに形態の良い精子でも、運動率が良い精子でも、その精子の核がどのような状態かは顕微鏡下で判断することはできません。男性不妊症の患者様では、クロマチンの欠陥や DNA の損傷を受けた精子の割合が多いと言われています。SCSA は、そのような異常なクロマチンを持つ精子のダメージ度合いを検出する方法です。
*クロマチン=1個の細胞 (精子) の中に存在する、DNA とタンパク質の複合体のこと
- 【対象】
- AIH,ART
ART 診の方は採卵前、または採卵日に合わせて採精していただきます。
一般診の方も、一般精液検査またはAIH の日に合わせて採精していただきます。
どちらの場合も、少量の精液で検査可能です。 - 【方法】
- まず、精液を測定しやすい濃度に薄め、DNA の変性 (核酸やタンパク質などの生体高分子が、生理的条件での高次構造を失い変化すること=ダメージ) を誘導するために、酸性処理を用いた刺激を与えます。その後すぐにアクリジンオレンジという蛍光色素で染めます。アクリジンオレンジは、通常2本鎖 DNA (=正常な精子DNA) に結合すると緑色に検出され、変性して2本鎖から1本鎖にほどけてしまった DNA (核タンパク質が不安定なため、刺激によりダメージを受けた精子DNA) は赤色に検出されるという特徴があります。
このような処理をした精液をフローサイトメトリーと呼ばれる器械にかけると、緑色の集団と赤色の集団に分けることが出来ます。
SCSA では、赤色に検出された集団の割合 (DFI) と、正常集団よりも数値が高かった割合 (HDS) で診断を行なっています。 - 【結果&診断】
- DFI; DNA fragmentation index/DNA 断片化指数
不安定な核タンパク質を持った精子の割合がわかります。
この値が30% 以上だと、人工授精よりも体外受精、IVF よりも ICSI の方が妊娠率が高いことが報告されています。 - HDS; High DNA stainability/高 DNA 染色性
未熟な精子の割合がわかります。
この値が 10% 以上だと、人工授精よりも体外受精の方が妊娠率が高いことが報告されています。

青い集団:正常精子
赤い集団= DFI:変性した精子
緑の集団= HDS:正常だが蛍光強度が高い精子(=未熟精子)
グレイの集団:ゴミや壊れた細胞
この SCSA によってわかる"精子のダメージ"は加齢により上昇し、また、採精からの時間経過とともに上昇する傾向があります。
もちろん、SCSA の結果だけで精子の良し悪しをすべて判断することはできないため、他の精液検査の結果と合わせて総合的に診断しています。
精巣組織検査(精巣生検)
ここでは精巣組織検査(精巣生検)について詳しくお話します。
男性不妊症の外来を訪れる患者様の約2割の方は、精液中に精子が1個も認められない無精子症です。さらに無精子症は、精子の通り道が障害されている閉塞性無精子症(約2割)と、精巣(睾丸)そのものにダメージがある非閉塞性無精子症(約8割)に分類されます。
精液検査で無精子症と診断されると、次に行う検査が精巣組織検査です。つまり川の下流に水が流れてこないので、ダムには水がいっぱいたまっているかどうかを調べる検査といえます。
しかしこの検査は現在、過渡期にあり、精巣の中に精子がいるかどうかについてのみの目的で行うのは、将来的には閉塞性無精子症(精子の通り道が障害されている)が強く疑われる場合のみになると思われます。
方法
まず最初に精管の周りに走っている神経をブロックするように麻酔し、次に実際に切る陰嚢の皮膚の上に麻酔をします。陰嚢にメスで約0.5cmの切開を加えて、精巣の実質を出して、はさみで精巣組織をごくわずか採取します。
採取した精巣組織は精子培養液と固定液(ブアン液)の中に分けて入れます。固定液の中に入れた組織の結果はすぐに出ませんが、精子培養液の中に入れた組織はすぐにはさみで細かく切り、2枚のスライドガラスを用いてすりつぶした後、顕微鏡で精子が存在するかを確認します。
精子がいれば精巣生検はその場で終わりとなり、糸で縫合して終了しますが、いないと片側の精巣で3ヶ所、反対側の精巣で3ヵ所をするときもあります。(multiple biopsy)
閉塞性無精子症では当然、全例で精子が見つかりますが、非閉塞性無精子症でも精子が見つかる確率は、約4割です。つまり、精液の中には精子が全くいないのに、精巣(睾丸)の中にごく少数の精子が見つかる場合もあるのです。
一方、固定液の中に入れた組織は、ヘマトキシリン-エオジン染色と呼ばれる方法を用いて、顕微鏡で精細管をすべて観察し、精巣組織を評価します。
精巣の組織検査をしたあとは、感染予防の目的で抗生物質の薬を1週間内服していただきます。また、痛み止めの坐薬を持って帰っていただき、痛みが強い時は坐薬を使用していただきます。入浴は1週間後に抜糸をするまで禁止です。(シャワーは翌日から可。)
閉塞性無精子症は、精巣のどの部分でも均等に精子をつくっています。しかし、非閉塞性無精子症では、精巣のある部分では精子を作っていますが、別のある部分では精子を全く作っていないというように、精子を作っている場所が不均等な方がほとんどです。
これまでお話してきた方法(multiple biopsy)では、どこで精子を作っているのかがわからなかったために、精子を作っている部分を探すためには、何箇所も精巣の組織を採取する必要がありました。
精細管の太さは、精子を作っている精細管では太く、精子を作っていないセルトリ細胞のみの精細管や精細胞もない精細管内が詰まった精細管では細くなっています。
この性質を利用して、精子を作っている太い精細管を探すために、最近では顕微鏡を使用するようになりました。顕微鏡を使用する方法(micro dissection)を実施すると、従来の方法(multiple biopsy)よりも、精子を発見できる確率が高くなりました。