カウンセリング広報だより
第22回 不妊治療の誤解と真実(2009.4.1)
心理カウンセラー 中島美佐子
不妊治療は、まだ一般的には理解されていない部分があり誤解も多いようです。
その誤解の一つは、「不妊治療を利用すれば誰でも妊娠できる」というものです。不妊治療は決して万能ではありません。わたしたちの妊娠する力を助けてはくれますが、完全に治療するということができにくいのが不妊です。受精卵を子宮に戻すところまで補助する体外受精でも、その妊娠率は一般的に25%ほど※1と言われています。
また、「不妊治療をすれば何歳でも妊娠できる」というのも誤解です。確かに、加齢のため妊娠しづらくなった女性が不妊治療によって妊娠できることも多いでしょう。けれども、不妊治療は生殖年齢の限界を超えることはできないのです。だから、「不妊治療があるからいつでも産める」とは言えません。
それから、「不妊治療を受ける人は特別な人たちだ」という誤解もあります。現在日本で年間2万人近くの体外受精児が生まれています※2。それは 1年に100万人新生児が誕生しますから、約50~60人に1人の割合で生まれているということです。タイミング療法や人工授精を含めれば数はもっと多くなります。生殖医療は、もはや特別な人たちが受ける特殊な医療とはいえなくなっています。
そして、わたしたちはつい「子どもができれば不妊の問題から解放される」と考えがちです。もちろんそういうこともありますが、そうでない人がいるのも事実です。子どもが生まれても、不妊治療をしたことや不妊で苦しんだことが全て消えてしまうわけではないからです。自分の不妊と折り合いをつけられず苦しむ人もいます。
このように、不妊治療に関する誤解はいろいろあります。誤解から傷つけられることもあるかもしれません。また、たくさんの情報に振り回されて判断力が鈍ってしまうこともあるでしょう。
一人でも多くの人が不妊治療の正確な知識を身につけることで偏見や誤解を減らすことができたらよいと思います。そのためにはまず、不妊治療を受けている不妊体験者の人たちが、正しく不妊治療を理解して上手に利用していくことが、必要なのかもしれません。
参考文献 平山史朗(2008)第27回日本心理臨床学会 事例発表配付資料
※1 体外受精妊娠率は施設によって異なります。
※2 日本産科婦人科学会調査データ(2006)から